大学出前講義
京都産業大学の法学部を中心とした学生に対して「土地家屋の調査と表示の登記」という講座名の講義を毎年行っております。学生の皆さんが大学を卒業し、将来、不動産を取得したり不動産に係る仕事に就いた場合の一助となるように、また、土地の境界紛争の予防や、境界紛争となった場合の対処法などを土地家屋調査士の仕事を通じて講義しております。
第1回 マンガでわかる土地家屋調査士
<授業内容>
土地家屋調査士が一体どんな仕事をしているのか、マンガを使って説明します。親戚のおじさんから土地を分けてもらい、建物を新築するまでにどのような作業が行われ、そしてどんな資格者がかかわるのか、楽しく理解できます。
- 学生の声
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- 不動産は必ずお世話になると思うので、とても興味を持って授業を聞くことができました。
- 家が建つまでにたくさんの手続きをすることにびっくりしました。
- 土地家屋調査士さん以外に多くの専門家が関わっていることを知りました。
- 中学生の頃家を両親が建てたのですが、完成までにすごく時間がかかったことを覚えており、10年越しに建築には時間がかかることを理解できました。
- 今後民法や民法に属する法律を学習する上で役に立つ講義だと感じた。
第2回 法務局での調査
<授業内容>
不動産の情報(登記記録)は法務局という役所で管理されています。その登記記録には
1)表題部、
2)所有権に関する事項、
3)所有権以外の権利に関する事項
と大きく三つに分かれており、不動産を特定する情報が書いてある部分が 1)の部分です。土地家屋調査士が登記できる部分でもあります。法務局には登記記録の他、公図や地積測量図などの図面が備付けられており、どのように調査するのかを学びます。
- 学生の声
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- 実際に登記の手続きの方法を聞いて、専門的なことも多く難しいと思いました。
- 表題部を見ればその建物が過去にどのように使われたのか分かったのはよかった。
- 登記記録の見方が分かり、自分の家の登記記録も見てみたくなりました。
- 登記については法学部の授業で習ってきたが、それをより深く理解することができた。
- 不動産の歴史が一目で確認できるものが登記だと分かった。
第3回 現場での調査
<授業内容>
登記記録の中の不動産を特定する情報は、常に正しいとは限りません。その情報は明治時代初期の情報をそのまま使用しているものもあります。土地家屋調査士は不動産と登記情報が現地で一致するのかしないのか、法務局にある資料だけでなく、様々な資料や測量データを元に判断します。また現地の構造物や地形なども考慮しながら境界を探っていきます。土地家屋調査士の調査方法を学ぶことで、不動産の実態を知ることができます。
- 学生の声
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- 隣接地との境界線はブロックや溝がある場所で分けていると思っていたが、実際にはブロックのどこか、溝のどの部分が境界か細かく言われれば難しいと思った。
- たまに測量している方々をみかけますが、測量の技術に感服します。境界標を意識してふらっと歩いてみたいです。
- 土地家屋調査士と言うのは境界を確定するのに数ミリの精度でとても気を使っている仕事だと思いました。
- 実際の調査の仕方は地道な仕事の積み重ねであることが理解できた。
- 現地調査などの作業をスムーズに行うためには、依頼人や隣地の人などとのコミュニケーションが不可欠だと思った。
第4回 京都産業大学の不動産
<授業内容>
普段学生生活でよく見る大学の土地や建物について一体どのように登記されているのか確認します。また大学ができるころからの地形の変化を写真など使いたどるとともに、登記記録や地図がどのように変わっていったのか対比しながら学びます。
- 学生の声
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- 大学の土地のつくりや大学内の建物などの登記を見せていただき、昔の校舎のつくりなども登記を通じてわかった。自分の知らない時代の大学が登記から分かるのがおもしろい。
- 私たちの通っている大学の土地境界を図で説明していただいたことにより、境界のイメージがつかめました。
- 不動産業界に行きたいと就活しているので、具体的な法律に沿った授業はわかりやすいです。
- 土地は一個の土地から成り立っていると思っていたのに、大学の土地が40筆以上あることに驚いた。
- 不動産の調査では明治時代からの変遷を調査するのもびっくりしました。
第5回 各種法律からみる不動産取引の実態
<授業内容>
不動産に関わる法律は多岐にわたります。建築基準法や都市計画法、農地法などなどです。それらの法律を理解した上でないと不動産を思ったように利用できないことを学びます。また民法の二重譲渡、時効取得など法学部で学ぶ基本的な条文を実際の現場を勘案しながら学べます。さらには不動産鑑定士の視点から見ることで、市場における不動産の捕らえ方を知ることができます。
- 学生の声
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- 民法で学んだ内容も忘れているところが多かったので、勉強しなおせました。
- 不動産はどちらかというと法学的なイメージがありましたが、価格の三面性の話を聞いて経済的なイメージも強くなりました。
- 一見道路に見えているのに法律上道路に面していない土地などがあり、不動産を買うときにはしっかりと調査をしなければならないということが一番印象に残りました。
- 住む側の視点を持って不動産の価格について考えることができたので面白かった。
- 今までの授業では単位を取るために覚えていたところがあったが、今回の講義で民法は本当に私達の生活に密着しており、登記は将来知っておかねばならないことであるということがよく理解できた。
第6回 これは登記できる建物ですか?
<授業内容>
法務局に備付けの地図と現地が一致しないことを事例にあげ、登記記録と現地が必ずしも一致せず、登記が真実を表していないこと(登記には公信力がない)を学びます。また建物を特定するためには、なぜ、どのような要件が必要なのかを実例で示しながら、クイズを交えわかりやすく説明をします。
- 学生の声
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- 登記に関して公信力がないことに驚いた。
- 登記できるものとできないものについての説明が写真つきなので、すごく分かりやすく興味を持って話しを聞けた。
- 民法と照らしあわせながら登記について具体的に説明されていたのでよく理解できた。
- 登記が認められない建物があることに驚いた。
- 日本の登記に公信力がないのは大問題なのじゃないかと感じた。
第7回 マンションは一体だれのもの?
<授業内容>
「区分建物」という聞きなれない建物について、登記記録と対比しながら専門用語を分かりやすく説明し理解します。また民法における共有の概念を学ぶことで、分譲マンションが単純に共有だけでは取引上支障をきたすことを知り、その問題を解決するために生まれた敷地権を理解します。
- 学生の声
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- マンション購入をする人は部屋が必要なだけであり、土地がほしいのではないから、土地と建物をパッケージ化した敷地権が生み出されたのはなるほど!と思った。
- マンションの登記の仕組みがよく理解できました。
- 絵を描いたり、図で示したりして難しい民法を説明していただき理解できました。
- 区分建物は非常に難しい。
- 学生の声
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- 現状の日本の制度的な土地の問題点をタイムリーに取り上げてくださったのでより学ぶ意欲が高まりました。
- 土地を特定するにあたって、地番や地図、地積測量図を用いる必要があることがよくわかった。
- 登記のない土地が道路以外にもあるということにびっくりした。
- 明治時代から現代までの登記記録の変化がすごいと思った。
- 沖ノ鳥島や尖閣諸島の登記を見ながらの授業は理解がしやすかった。
- 国際法のゼミを取っているので、外国人による不動産の取得について話し合ってみたいと思います。
第9回 土地に関する実務と実際
<授業内容>
土地の登記は様々あるが、どのような動機からどんな登記が行われるかを知ってもらいます。また実際に苦労すること、嬉しいことなど今までの経験談を踏まえながら土地家屋調査士としての仕事を知ってもらいます。
- 学生の声
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- 実際に宅地分譲や道路拡幅などを行うときに、どういう手続きをしなければならないのか土地家屋調査士の仕事が理解できました。
- 日本の土地が小さめに登記されている歴史上の理由や、そのような土地が多いことに驚きました。
- 昔の測量の仕方を学ぶことができて面白かったです。
- 隣接確認や境界確認がとても重要であることがよくわかりました。
- 現場の様子が伝わってきた。
- 土地家屋調査士に求められているものの対話力・交渉力・説明力・人柄・忍耐力が必要だと聞いて面白いと思いました。
第10回 不動産と税金の切っても切れない関係
<授業内容>
不動産には様々な税金がかかり、特に登記名義を変えることによって思わぬ税金がかかることがあります。実務上土地家屋調査士がよく目にする税金について実際の事例をあげながらどのような場合にどんな税金がかかるのか説明します。(詳しい税金の説明については税理士さんにお聞きください)また住宅ローンの仕組みについても説明します。
- 学生の声
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- 住宅ローンと税金のかかわりがよくわかりました。
- 金利の話しは将来自分がお金を借りるときに知っておいた方が絶対ためになると思いました。
- 書籍から学ぶのも良いが実務者から聞く話はとても参考になります。
- 不動産にまつわる様々な手数料、税金を知ることで今後の自分にすごく関わってくると感じました。また税金は国を運営していくに当たり必要なものだとも感じました。
- 何かお金に関する大きなことがある場合には気軽に税理士さんに相談しようと思いました。
- 税法のゼミを取っているので非常に参考になりました。
第11回目 なぜ不動産登記法に地図の条文があるのか?
<授業内容>
ひと口に地図と言っても様々な地図があります。その違いを分かりやすく明らかにし、法務局にある公図の問題点を浮き彫りにします。また現地を正確に表した14条1項地図の作成の必要性とその重要性について学びます。
- 学生の声
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- いつも見慣れているはずの大学の地図を書いてみて、何が地図に必要な情報なのか難しいと思ったが、地図の重要性、大事な特長について知ることができた。
- いつもの講義と違い自分で体感しながらの授業であったので身に入るスピードも速かった。
- 自分の頭の中で思い描いていたことを相手に伝えることは、自分を基準としてしまうので難しいと感じました。
- 自分で地図を描き地図の本質を理解することで、14条地図が「取引の安全と円滑に資することを目的としている」ことに感銘しました。
- 自分で地図を描くことによって14条地図がとてもシンプルに見えることに驚きました。
- 地図にして人に伝えることは簡単だが、言葉にして人に伝えるのはとても難しいと感じました。
第12回 境界はいつからどのようにできたのか
<授業内容>
奈良時代から明治時代に至るまでの日本の土地制度の沿革を知ることで、どのように所有権が確立されていったのか理解するとともに、筆界と所有権界の違いについて学びます。
- 学生の声
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- 歴史的背景を含んだ説明が、現在の地図や土地制度への理解の手助けとなった。
- 農地改革と土地家屋調査士は、係わり合いが深いと思った。
- 日本の土地制度がとても古くから結びつきがあるのが意外であった。
- 近代的所有権が確立したのが明治時代だとは驚いた。
- 境界の話しだけではなく、身近な境界(パーソナルボーダー)や琵琶湖が河川だと言う話が聞けて面白かったです。
- 150年前の台帳や附属地図が現在も利用されていることを知り驚いたし、150年前の技術についてすごいと感じた。
- 土地家屋調査士が境界紛争解決への適切なアドバイザーになることを理解しました。
第13回 お隣との境界確認ができないときは
<授業内容>
境界紛争のメカニズムを学ぶことで、境界紛争の複雑さ、難しさを知ってもらう。またその紛争解決の方法として境界確定訴訟、所有権確認訴訟、筆界特定制度があるが、それらの違いについて学ぶことで紛争の事例に応じた使い分け方を知ってもらう。
- 学生の声
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- 今自分が住んでいるところが境界の範囲だと思っていますが、本当は違うかもしれないと思った。
- 境界紛争が起こった場合、まずは弁護士に相談することを思いつきますが、弁護士でもなかなか理解していない人が多いということには驚きました。
- 境界紛争は専門的な知識がなくては解決できない事案であり、証拠が非常に少なく決着をつけるのが難しいと思いました。しかし土地家屋調査士はその専門的知識を持った必要とされる存在であると思いました。
- 隣の家との境界での問題がこんなにも大変なものだとは思いませんでした。
第14回 境界問題相談センター(ADR)での取り組み
<授業内容>
個人個人の認識の違いからもめごとが起こり、感情がコントロールできなくなって紛争に発展する過程を物語から理解します。その上で裁判によらない当事者の話し合いによるADRによる解決方法を学びます。
- 学生の声
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- 紛争には両方に言い分があるので、よく聞いて解決しなければならないと思いました。
- ゲーム感覚で境界紛争の解決について学ぶことができました。
- だまし絵を見て人間は他人の意見からすぐに影響を受けるのだなぁと思いました。
- 自主的な和解を目指してADRセンターを運営している土地家屋調査士の働きはすばらしいと思いました。
- 裁判をする場合の手間やリスクなどとてもよくわかりました。
- 何も知らない一般人相手に自主的な解決を促すことはとても大変そうだし、冷静な話し合いで納得してもらうのはきっと難しいと思いました。
第15回 これからの登記制度と地籍
<授業内容>
土地家屋調査士が行う仕事を振り返り、これからの土地家屋調査士が目指すべき地図情報に関わる仕事について学びます。特に地籍におけるレイヤーと言う考え方を知ることにより、未来における登記制度を考えます。
- 学生の声
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- 内容が想像できない資格名とは裏腹に、私たちの生活の身近な内容の講義で興味深く聴講しました。この講義のおかげでもし境界紛争になった時には冷静に対処ができそうです。
- 最初は理解できず時間だけが過ぎていく感じがしたが、毎回講義に出ていると授業の振り返りや質問への回答がすぐにもらえ、5回目を過ぎた頃から少しずつ理解ができるようになりました。
- 土地家屋調査士と言う職業は聞いたことがない職業でしたが、講義後は不思議なくらい身近な職業だと言うことが理解できました。この講義で学んだ経験や知識をこれから活かすことができればいいと思います。
- 現役で活躍しているプロの調査士の講義は情報がリアルタイムで新鮮であり、現場でのより実践的な講義であった。
- 登記法の授業とは違い具体的な例を挙げてくださることが多く、イメージはつかみやすいが体系的に理解するのが難しくなっていました。
- 多数の先生が週代わりで講義を行っていただくと、毎回新鮮な気持ちで授業を受けることができました。毎回ある小テストが振り返りになり、フィードバックしながら学べると言うところが他の授業ではあまりないので学びやすかったです。
- 小テストはきちんと授業を聞いていれば必ず点数が取れるようになっているように工夫されていました。また小テストにどこが分からないのかを書いたり、質問をすれば先生がきちんと答えてくれたのがよかったです。